2010年04月07日
「平和を創る発想術」
実はこの本、出版の段階で関わりがあるので、
手前味噌だからやめとこうと思っていたのですが
読み返してみて新たな発見があったので。
ここだけの話、
岩波ブックレットから本を出したことある人・団体ならわかると思いますが
確か100万円なんですよねー
売れても売れなくても著者サイドに払われるのはその金額
(今はどうかわかりませんが)
この場合、当時ご好評頂いてすぐ再刷があったので
岩波サンはよかったでしょうね
ワークショップを開いたり、訳したり、わかりやすくまとめたりする労力を考えたら
安いかもしれませんが、まあこの場合は営利目的ではないので。
本題入ります。
マーケティング本を読み始めてからこの本にふれると、
マーケティング的な読み方もできそうだなと。
conflict(紛争)を「平和」に発想するケーススタディも多く紹介されています。
(もちろん沖縄のケースも)
それを理解する上の深層文化、日本的紛争解決法、ベーシックニーズなどが
マーケティング要素を含むかなと。
深層文化をまとめると
紛争解決に導くために、
文化の違いに注目すべし。
とくに長い歴史や風土の中ではぐくまれた特有の文化、ものの考え方。
「deep culture/深層文化」
=個人のものの考え方とは別に
「集団的レベルにおける潜在意識」と定義されます。
例えば
フランスでは通りの名前に男性や軍人の名前がつけられているのに対し、
日本だと地形や自然に関するものが多い。
だから日本では自然と一体となって生きるという考え方や
物事は四季の移り変わりのように変わっていくと発想する傾向がみられるというのです。
これが複雑な紛争の場合、表面化します。
分析に使われる概念は
「D・M・A」と「C・G・T」
D/dualism 二分法(例えば男/女)
M/manichaesim 物事を善悪にわけること(例えば男は善、女は悪)
A/Armageddon アルマゲドン 最終思想、徹底的な破壊
これで[9.11]を検証すると
アメリカは
D キリスト教原理主義的考え方
M キリスト教は善、それ以外は悪=テロリスト
A タリバン、アルカイダの完全破滅
アフガニスタンは
D イスラム原理主義
M イスラム教徒は善、アッラーを信じないものは悪
A 徹底した報復活動
C/choseness 選民思想
G/glory 過去の栄光
T/trauma トラウマ
日本とアメリカをこれを使って分析すると
アメリカは
C 神によって選ばれた民、神によって創られた国であるから、
自由と民主主義を広めるために世界を支配する権利がある
G 第二次大戦の勝利
T 真珠湾攻撃
日本は
C 天照大神に選ばれた選民だからアジアを救う必要があると信じる
G 元寇の勝利、日清・日露戦争の勝利、大東亜共栄圏の夢、戦後の経済成長など
T 朝鮮出兵の敗北、黒船の到来、原爆と敗戦、バブル崩壊など
日本の場合は流れは繰り返し巡ってくるものと考えるのに対し、
アメリカは短い時間感覚でとらえがち。
こういったバックグラウンドが紛争になった場合に表に出てくると分析しています。
まだまだ続くので
詳しくは本著に目を通してみてください。
コアな部分に迫っていて、示唆に富んでいると思います。
本にする段階でわかりやすさを意識していたので
他のガルトゥング専門書に比べ読みやすいですよ。
おすすめ度★★★★★
平和を創る発想術―紛争から和解へ (岩波ブックレット)
Posted by hkxj at 01:30│Comments(0)
│生きかた